以下の文章と写真は2015年4月24日、宮城野区文化センターPaToNaホールにて行われた「Music from PaToNa vol.5」に寄せたこの楽器の物語です。


2011年3月11日、私の工場の中は全てのものがぐちゃぐちゃにかき回されていました。小さなビスは勿論、大きな木工機械まで元の位置にあるものはありませんでした。そんな中でフレームが出来上がりつつあったこの楽器は酷く傷つきながらも作業台の上にとどまっていました。
「再起不能」
「廃業」
そんな言葉が頭の中をよぎります。
しばらくたってから工場の片付けを始めました。
どうにか底が見えてきたところで残ったのがこの楽器です。
いろいろな事を考えているうちに、とうとう私は決断しました。
「造るしかない、いや、完成させなければ」
それから長い時間がかかりましたが、傷だらけのフレームは美しいチェンバロになりました。
そして今日、仲間たちとともに、美しい響きをお届けいたします。
そう、みなさんのために。